リハビリテーション科

リハビリテーションとは

リハビリテーションは身体機能の低下やそれに伴う能力低下に対して、社会生活に適応する為のあらゆる手段を含んでおります。 身体機能の改善を図るための訓練だけではなく、社会や環境設定などの助言等も行います。

リハビリテーション科の行動方針

・医学的根拠に基づき、身体機能及び基本動作能力の回復を図る
・身体と精神両面から、その人らしい生活が送れるように支援する
・個々の能力を最大限に活かしたコミュニケーション手段の獲得と利用を図る

リハビリテーション施設基準

運動器リハビリテーション料(Ⅰ)

変形性関節症、腰部疾患、肩関節周囲炎、骨折などの患者様

脳血管疾患等リハビリテーション料(Ⅰ)

脳梗塞、脳出血、未熟児、発達障害、痙攣などの患者様

廃用症候群リハビリテーション料(Ⅰ)

手術や治療などにより身体機能や日常生活動作能力の低下した患者様

心大血管疾患リハビリテーション料(Ⅰ)

急性心筋梗塞、狭心症、心不全、虚血性心疾患、開胸手術後などの患者様

呼吸器リハビリテーション料(Ⅰ)

肺炎、慢性呼吸器疾患、手術前後に呼吸ケアが必要な患者様

がん患者リハビリテーション料

消化器系がん、乳がん、肺がんなどの患者様

特色

 当科は急性期病院として発症直後では、ベットサイドにて早期離床、早期ADL獲得を目標とし手術前など早期のリハビリテーションを実施しております。外来でのリハビリも実施しており、あらゆる病期の患者様にリハビリテーションを提供しております。対象とする疾患も脳卒中、骨折、心疾患、肺炎等、多種多様で、小児から高齢者まで全ての方を対象としております。
・整形外科
当院は脊椎センターや人工関節センターがあることや、側弯外来も実施しており脊柱や人工関節の手術を多く行っております。早期離床・早期自宅退院を目指してリハビリテーションを実施しております。また、必要な患者様には外来リハビリも行い、日常生活の自立ができることを目標としております。

心臓リハビリテーション

心肺運動負荷試験(CPX)

 当科では、心筋梗塞後の患者様が自宅へ退院後に、負荷量が多い生活や仕事をする際に実施しています。CPXは心臓や肺だけではなく、筋肉も含めて運動耐容能(体力)の検査を実施します。この検査を実施することで心臓に負担をかけずに安心して運動を行える運動の強さを知ることが出来ます。

 CPX検査後は、検査の結果をもとに安全かつ効果的に運動を行うための運動指導や、家事、就労、趣味活動において安全に活動を行うための生活指導を実施し、痰飲後の患者様のより良い生活をサポートします。

小児リハビリテーション

 脳性麻痺、自閉症スペクトラム、注意欠陥多動性障害、ダウン症候群、脳血管障害、痙攣発作など生まれつき障がいのあるお子様だけではなく、後天性の障がいがあるお子様へのリハビリも行っております。理学療法、作業療法、言語聴覚療法それぞれで入院・外来ともにリハビリテーションを提供しております。

がんリハビリテーション

  がんの進行や治療により、倦怠感から寝ている時間が増えてしまいます。また、関節が硬くなることや筋力低下、しびれなどの神経症状が出ることがあり、自宅での動作や歩行、家事といった活動が行えなくなってしまう可能性があります。
 当科では、がんの治療のために化学療法が行われている方や緩和ケアを目的とした治療を行っている方にも苦痛の軽減や、自宅復帰を目標として、リハビリテーションを実施しています。

教育体制

 新入職員への教育としては、当科独自の新人教育プログラムを導入しております。また、臨床教育については、当科スタッフ全員で新人リハスタッフを育成することを基本方針としておりますが、サポート役として一人の新入職員に対し一人の指導者(主任技士)が教育の進行をサポートする体制をとっており、当科スタッフ一人一人が成長できる環境を整備したいと努力しています。

院外活動

市民公開講座

 地域の方々に向けて、転倒予防や腰痛予防などといったリハビリテーションに関わる内容についての講演を市民の方に向けて実施しております。

市民公開講座の様子

家屋調査

 当科では自宅への退院に際し、能力面から不安を感じた方に対し、実際に生活している自宅を訪問し自宅退院後の生活が安全に送れるための提案を行います。手すりの設置や家具等の配置の変換など、生活環境を考えながら、患者様の能力に合った生活環境が実現できるよう実施しております。

理学療法(Physical Therapist)とは?

 病気、けが、高齢、障害などによって運動機能が低下した状態にある人々に対し、運動機能の維持・改善を目的に運動、温熱、電気、水、光線などの物理的手段を用いて治療を行います。

当院理学療法の特徴

 当院は総合病院であり、様々な疾患を対象にリハビリを行っております。発症間もない超急性期~急性期の患者様に対して呼吸リハビリや関節可動域練習・歩行練習などを行い、可能な限りの自立を目指しております。

理学療法室の様子

呼吸訓練

 開胸・開腹術を施行される場合、術後に無気肺や閉塞性疾患といった呼吸器合併症が発生するリスクがあります。これを予防するために、術前から呼吸リハビリテーションを行うことが有効とされております。当院でも、術後合併症のリスクが高いと考えらえる患者様に対し、腹式呼吸の指導やインセンティブスパイロメーターを用いた訓練を実施しております。

心肺運動負荷試験CPX:Cardio Pulmonary Exercise test

 心電図、血圧、呼吸中の酸素、二酸化炭素の濃度を計測しながら運動(自転車こぎ)をして頂きます。心臓だけでなく、肺や運動に使われる筋肉の状態等を総合的に見て運動耐容能(体力)を評価する検査です。検査を行い現時点での体力を評価し、心臓に負担無く安全に行える運動量の具体的な指導(運動処方)をさせて頂きます。

膝関節専用筋力増強・測定システム COMBIT

 当院では、前十字靭帯損傷の患者様の手術前・手術後の関節運動で出力される筋力を数値で示し、リハビリテーションの効果判定を客観的に行っております。その結果に伴い、スポーツ復帰や社会生活への復帰を目指したリハビリを行っております。

新生児集中治療室 NICU

 両親と共に子どもの発達に目を向けたケアに取り組んでおります。NICUにおけるリハビリは、姿勢や運動、哺乳等の評価を行い、ポジショニング・哺乳支援・発達促進・家族指導等の個別性を持った早期介入を実施しております。そして、退院後も必要に応じて外来フォローを行っております。

作業療法(Occupational Therapist)とは?

 基本的な運動能力から社会の中に適応する能力までを維持改善し、「その人らしい」生活の獲得を目標にします。 将来の生活を見越し、作業を通じてこころとからだの基本的な機能の改善を援助するとともに、新たな機能の低下を予防します。

当院作業療法の特徴

 様々な疾患に対して、病気や怪我の直後から作業療法を開始します。作業療法士一人一人が、個々の患者様、ご家族の気持ちに寄り添い、適切な評価、プログラムを通して、患者様の基本的な機能の改善や生活機能の改善をサポートします。

作業療法室の様子

ADL(日常生活動作)訓練・IADL(手段的日常生活動作)訓練

 更衣動作や入浴動作などの日常生活動作の基本的能力の向上を図るとともに、家事動作や仕事などの生活関連動作の向上を目的としたリハビリを提供します。

上肢機能訓練

 上肢(腕)の骨折の手術後や肩の痛みによる上肢機能障害に対し、運動療法や、作業を用いた機能訓練などを行います。必要に応じてスプリントの作成も行っております。

高次脳機能検査・訓練

 脳血管疾患等により高次脳機能障害(行動・注意・記憶・言語の障害)を呈した方に対して、日常生活動作の獲得と社会復帰を目的とした検査・訓練を行っております。

小児リハビリテーション

 お子様の日常生活動作、運動機能面、発達の遅れに対してリハビリを提供します。遊びを中心とした様々な作業活動を用いて、ご家族やお子様のニーズを基に具体的な目標を決めて支援をしていきます。

自助具紹介

日常生活動作を自立するために、必要に応じて様々な自助具や装具の提供も行っております。

自助具
自助具

IVES(低周波治療器)

 筋肉の活動に合わせて電気刺激を送り、筋肉の収縮を促す治療機器です。IVESを装着した状態で握る・離すなど、運動の練習をしていきます。

言語聴覚士(Speech Language Therapist)とは?

 病気や交通事故、発達上の問題など何らかの原因で、コミュニケーション、発声・発音、認知、摂食嚥下機能が低下または障害された方々に対して、自分らしい生活ができるよう支援します。

当院言語聴覚士の特徴

 ICU・NICUを含め、小児から高齢者まで幅広い方を対象に、脳梗塞後の様々な症状やお子様の成長段階に合わせたリハビリを提供し、生活の質(QOL)の向上を目指します。また、検査・評価・訓練のほか、加齢による飲み込みにくさや声の高さ・強さに対する指導や、お子様の就学後の支援なども行っています。

嚥下訓練

 嚥下内視鏡、嚥下造影検査、3DCTなどの検査・評価・訓練を用いて、安全な食事環境の獲得を目的としたリハビリを提供します。嚥下筋筋力向上訓練や食事方法の指導、食形態の検討などを行うことで、むせや飲み込みにくさの軽減・改善を目標とし、口から食べる楽しさを継続できるよう支援します。

顔面マッサージ

 「顔が引きつって違和感がある、目が閉じにくい」など顔面神経麻痺の方に対してマッサージを行い、生活する上での注意点や後遺症予防を指導します。

構音訓練・発声訓練・失語症訓練・高次脳機能訓練

 「呂律が回らない、声が擦れる、言葉が出てこない、文字が読めない、物事が覚えられない」など様々な症状に合わせて、検査・評価・訓練を行います。生活上の指導も行うことで、円滑なコミュニケーションや日常生活動作の獲得を目指します。

言語発達訓練

 ことばの遅れがあるお子さんに対して、相互的なやりとりを目的としたリハビリを提供します。課題や遊びを通して、物の名前や動詞、形容詞、文字理解を含めた、自然なことばの獲得を目指します。また、集中が続かないお子さんに対しては、磁石やパズル課題などで集中力の基盤を作り、今後の学習に繋げていきます。ご家族のニーズに合わせて、園や学校、ご自宅での関わり方を検討します。

構音訓練・吃音訓練

 特定の音が構音できないお子さんに対して、口唇や舌の運動練習などから、正しい音の産出を目指します。ことばがつまるなど(吃音)の悩みを抱えたお子さんに対しての指導・訓練も行います。

 物理療法とは?

 物理的なエネルギーを利用して身体の疼痛や筋肉・関節拘縮、筋力低下といった症状や障害に対して改善を図る治療方法です。消炎鎮痛処置として用いられますが、理学療法や作業療法を行う際の、除痛や組織緊張の緩和を目的に併用し、運動療法の効果を加速化させる手段として活用することもできます。運動器疾患に多く見られる関節可動域制限や末梢神経麻痺などの治療に対して、「関節が十分に機能しない」・「関節の動きに制限がある」・「痛みがある」などの症状に対して、軟部組織の痛みや硬さなどの改善目的に用います。

当院物理療法の特徴

 物理療法の対象は、主に頸部・腰部の疾患をはじめ、肩関節周囲炎、骨折・脱臼や靭帯損傷や変形性関節症などの整形外科疾患の患者様となりますが、整形外科疾患以外の手術後に発生するリンパ浮腫の患者様に対しても、リンパ浮腫ドレナージとして浮腫の改善に処方されています。皮膚および皮下組織、筋組織、循環器系に対して効果があります。 脳卒中などの患者様にも、痛み・しびれの緩和を目的に処方される場合もあります。

当院で行われている主な物理療法

徒手マッサージ・エアマッサージの様子

①徒手マッサージ・エア(空気圧波動)マッサージ

 徒手によるもの、空気圧式などの機械的なものなど、力学的方法で生体に作用します。

電気治療から低周波電気治療の様子

②電気治療⇒低周波電気治療

 神経や筋肉を電気刺激し、筋委縮の予防、随意運動能力の回復を目的とし、痛み発生物質や老廃物を排泄し、栄養が供給され局所症状も改善します。

牽引療法の様子

③牽引療法(頸椎牽引・腰椎牽引)

 脊椎を牽引することにより、椎間孔を拡開・椎間関節を離開し、神経根を除圧します。また、椎間関節周囲の軟部組織を伸張し、循環を改善します。更に、筋のスパズムを緩和・脊柱の軽度の歪を矯正するとされています。